わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

磯崎憲一郎『電車道』読了

 現代、しかも震災後に到達したところで物語は終わる。洞窟にはじまり、鉄道とともに時間は流れ、そして洞窟とともに幕を閉じる。

 マルケスの『百年の孤独』の読後感の、わけもわからず魂が震えはじめるような感覚は本作にはない。だが、じわっとした感動、平穏であることの喜び、人とともに街もまた成長していくことの喜び、は、小説だからこそ、強く感じることができる。

「物語」という形式をある程度捨ててこそ、小説の新たなスタイルは生まれるはずだ。最近のぼくの関心はそこにあり、その可能性を示してくれたのが本作、って感じかな。ここ最近では、保坂和志『朝露通信』とおなじくらい気に入った。

 

電車道

電車道

 

磯崎憲一郎の作品はこちら。

 

 

朝露通信

朝露通信