わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

上田岳弘「ニムロッド」読了

「群像」2018年12月号掲載。風邪を引いたせいもあって、かなりダラダラ読んじゃったな。

 社会や組織のなかで自分の存在が承認されず「異物」という自覚を抱えつづけること、信念をもってつづけていること自体が否定され徒労感に襲われること。そんなことの繰り返しが、「人間は、少なくとも自分という存在は、ムダを繰り返すためにしか存在していない」というネガティブな認識と感情が、社会適応能力を壊していく。バベルの塔も駄目な飛行機コレクションもビットコインの「採掘」という作業も、そんな状況の象徴なのだろうなあ。ただ、絶望ばかりがつづくわけではない。ある希望とともに、本作は幕を閉じる。でも、そこにも深い悲しみはある。希望は悲しみから生まれる…のかもしれない。

 なんか、寓話的な読み方をしちゃったなあ。そういうモチーフが多かったから、なんだけど。

 

 

群像 2018年 12 月号 [雑誌]

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