Amazonプライムで視聴。ヴィム・ヴェンダース監督が、2009年だったかな、に突然ガンで他界してしまったドイツの舞踏家、ピナ・バウシュの遺志を継ぐヴッパタール舞踏団を取り上げたドキュメンタリー。
舞踏は好きで、時々YouTubeで勅使河原三郎や大野一雄などの作品を鑑賞していたりするのだが知識はほぼゼロ。ピナのことは知っていたが、敬愛するファッションデザイナーの山本耀司が彼女の衣装を手掛けたことがあること、そしてヨウジさんの親友であり彼を取り上げたドキュメンタリーの傑作「都市とモードのビデオノート」を監督したヴェンダースが監督をしている作品ということで興味を持っていたが、ずっとほったらかしにしていた。が、観ていなかったことを公開するほどすばらしい映像だった。後悔。
とにかく映像が美しい。そして、きわめてストーリー性の高いダンス。もちろん解釈の幅はあるし意味をつかみかねる部分も多いのだが、解釈しようとすること自体が楽しいし、解釈せずにただひたすらその世界に埋没するという見方も、もちろんイイ。残された団員たちのピナへの尊敬と愛情、そしてピナの舞踏哲学が、誰も多くを語ったりはしていないというのに、ひしひしと伝わってくる。
たまたま、(ヨウジヤマモト論を書いた)鷲田清一の「群像」での連載「所有について」を読んでいたのだけれど、「身体は個人の所有物であり労働は他者に譲渡することが(価値交換だけど)可能だが、生命だけは本人が生来所有しているものであり(というよりも所有という概念を超越していて)、譲渡できるような性質のものではない」といった主旨のことを書いていた。ピナとヴッパタール舞踏団のダンス(彼女の言葉を借りればタンツ・テアター=ダンス演劇)はまさに他人への譲渡ができない生命の躍動なのだ、ぼくたちはそれを眺め、感じることしかできない、とつよく思った。しかし、その「感じること」に大きな価値があることはいうまでもない。
音楽もよかったなあ。
Pina (2011) - Official Trailer [HD]