わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

山崎ナオコーラ「長い終わりが始まる」読了

 近ごろの若者は交友が極端に淡い…そんなことが新聞にあったのを読んだ。コミュニケーション能力がデジタル/ネットワーク上では進化しているものの、生身の交流能力という面では退化、というより欠落?しているということらしい。本作の主人公は、ケータイ依存というわけではないが、やはりコミュニケーション能力が欠落している。自分は今までひとに好かれたことがないと思い込む被害者妄想的な思い込み、そしてバランスの悪い芸術至上主義。自分はサークルでお友だちごっこなどしたくない、と強く反発するが、その一方で疎外感を感じることが怖くて仕方ない。求めれば離れ、離れれば求める。交友関係とは、そんなものなのだろうか。タイトルのとおり、出会った時点で交友関係が終わっている。別れるための友情。本作では、そこに同様の道筋をたどる恋愛劇も絡まりあい、「長い終わり」がとても痛々しく描かれている。
 孤独な作品である。