わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

松浦寿輝『花腐し』読了

 表題作、読了。
 作品を包む闇は、深い。その深い闇の中で、妻の死と経営する会社の倒産という苦しみを抱え込んだ主人公は、知らず知らずのうちに、幻想的な逃避の迷路にはまりこんでゆく。混乱する思考、感覚、記憶、感情。しかし、なぜだろう、その先には不思議なことに、逃避には違いないのだろうが、妙な希望のような感覚がわずかに見える。松浦さん、どうしてこんなラストにしたのだろう。
 問題から目をそらさずに逃げる姿勢、とでも言おうか。それさえあれば、いくら逃げても、最後には、希望にたどり着けるのではないか。そんなことを考えつつ、読み終えた。

花腐し (講談社文庫)

花腐し (講談社文庫)

色と空のあわいで

色と空のあわいで

そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所

そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所