「群像」1月号掲載。おそらく、三島が生きていたらという発想をスタート点に書かれた小説。そういう視点から観ると、八十を過ぎた老作家の姿には三島っぽい雰囲気が希薄な気がするが、まあそのあたりは、そういう老人になったと松浦さんが想像したのだ、ということで。
うがったものの見方をすることで文学的に新しい価値を創造しつづけてきたらしい老作家。ひねくれ者なのだが、ふとした気まぐれで若い編集者とともに出かけたスコットランドで、本質と肉体のズレ、あるいは合一について真剣に考えはじめる。そして、川。スペイサイドの良質なスコッチウイスキーの源となっているテイ川の流れに触れ、そしてその水から生まれたスコッチ「Cragganmor」を飲むことで、本質とは何なのかを、おぼろげながら老作家は掴む。
ここ数年の松浦さんは、e泥沼の精神状況からの離脱と浄化が作品テーマになっているような気がするが、どうなのだろう。
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