http://www.chihiro.jp/tokyo/exb0904-2.html
http://www.chihiro.jp/tokyo/exb0904-1.html
11月15日まで開催中。前者は世界各国の絵本作家が描く猫、あるいは猫のいるシーンの作品約50点が公開されている。おなじドウブツだというのにタッチは多様で、各作家の猫に対する視線、そして愛情の形が作品を通じて見えてくる。いわさきちひろも猫好きだったようだ。彼女も猫の登場する作品を多数残している。今回展示されたほかの作家よりも、猫のとらえ方が鋭かったような気がする。気まぐれで、孤高で、いつだってニンゲンとはしっかり距離を取っていて、それでいてときに情が深く、ふとした瞬間にニンゲンの懐に、あるいは心の底にすっと入り込んでくる。そんな、猫のありのままの姿を描いていたのはちひろだけだったように思える。対称的におもしろかったのは、和田誠と長新太。和田誠の作品には奥さんのレミさんがモデルらしい女性が登場。猫よりインパクトが強かった。長新太の作品はナンセンスの極み。おもしろいなあ。
後者は戦争と平和をテーマにつくられた最新の画集(といっても生前の作品を編集して新たな一冊をつくったというわけだが)の出版にあわせた企画展。ちひろ自身の戦争体験が色濃く反映されていると思われる太平洋戦争時の様子、とりわけヒロシマ・ナガサキでの悲劇を1シーン化した作品群や、ベトナム戦争を題材にした連作はとても気に入った。楽しそうな子どもたちを描いた作品は大人びていたり優等生っぽかったりしすぎてあまり好きではないのだが、あの柔らかで無駄な線を極力排除しつつリアリティを求めたタッチが「優しさ」や「無邪気さ」ではなく「悲愴」「悲劇」そしてそれらを乗り越えて「生きる力」の方向に向けられると、ほんわかタッチに鋭さが増し、見る者の心にぐっと突き刺さってくる。いわさきちひろとは不思議な画家だ、とつくづく思う。
- 作者: いわさきちひろ,ちひろ美術館
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/02/26
- メディア: 単行本
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