「群像」12月号掲載。この夏の記録的な暑さの回想に、例の遺体と三十数年暮らしたという事件の話題が絡み、死者と死者を送る生者との関係についてに話題は広がる。生きる者の命のあやふやさが、長い年月を重ねながらにじみ出てくる。いや、逆か、生きる者の重ねる年月が、重ねようと重ねまいと関係ない、というくらい、曖昧になる。引用。
季節のめぐりも、一室への暗黙の意識のほかには、更新とも感じられなくなる。歳月の経っていた経たないのは、むしろ生者たちのほうになる。死者の送りという、大切な境を踏み損ねると、歳月はほんとうには積まれない。失われたときとは、このことか。
序章が終わり、本編へ。大きな病気で胃の半分を取った男が、退院後に感じるようになった、というよりは彼の目の前に幻視的に現れるようになった、何者かの眼……。
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