「群像」2021年3月号の古井由吉一周忌特集に掲載。古井さんとは「群像」で過去に対談もしている詩人による、古井さんの私小説論の傑作『東京物語考』の評論。評論の評論、ということになる。『東京物語考』、ウチにあるのだけれど読めていない。
古井由吉という作家は、私小説から遠く離れているようでいて、案外近いような雰囲気もあるなと以前から感じていたのだが、本作を読むと、嘉村磯多や葛西善蔵といった私小説作家に強い関心を寄せていたことがわかる。両者ともぼくのけっこう好きな作家で、一時期集中的に読んだ。その頃は「じーんとする私小説」という視点が強かったのだけれど、古井由吉のあの文体や作品世界との関連性というフィルター越しに読んだら、また違った印象になるのかもしれない。