わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

保坂和志『カフカ式練習帳』読了

 やはり猫が死んでいく断片は読むのがつらい…。が、小学生男子の無邪気な、あるいは謎に満ちた行動を描く断片はとても感情移入できてしまい、ぷっつりと文章が途切れてしまうのがとても惜しい。

 本作、文庫でもないのにめずらしくあとがきがある。断片を書く意義に関する部分をちょっと引用。本作の本質が、この数行に凝縮されている。

 

人間はいつからなのか、永遠という言葉を考え出しそれを世界観の中心かそのあたりに置き、結果それに苦しめられるようになった。その苦しさから逃れるために、「一瞬の中に永遠がある」とか「瞬間と永遠は等価である」などと考えるようになったが、この理屈は中学生でも思いつく粗雑なものだ。一瞬は永遠の反対語でなく補完語だ。そうでなく、生きることを日々のピアノの練習にすること。日々を構成する物事をできるだけたくさんピアノの練習のようにしてゆくこと。永遠や一瞬という病から離れること。克服するのでなく子どもの頃のようにそんなものと無縁になること。

 

カフカ式練習帳

カフカ式練習帳

 

 

朝露通信

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