五時四十分起床。夏は過ぎ、日中こそ真夏並みの気温になることはあるものの朝晩は過ごしやすくなったと挨拶代わりに口にすることが多くなってきているというのに、どういうわけか、夜中に暑さで目を覚ますことが多い。多いというよりも、連夜つづいている。目覚めとともに、軽い寝汗で、うわあ、と軽くおどけた小さな悲鳴をあげることが日課になっているのだが、今日は背中全体がしっとりと濡れ、襟首は汗を吸って重く、胸のあたりも前身ごろがぺたりと肌に貼り付いている。さすがにこれはあかん、と湯を浴び石鹸で清めたが、暑いという感覚は終日つきまとい、夜の入浴を済ませた今も、扇風機を「強」にセットし風をあてつづけている。これは体の外側の暑さだけでなく、内側からの何かなのかもしれない。盛夏の頃には異様な動悸と発汗、そして呼吸困難のような息苦しさが発作のように起こることが二三度あったが、その名残をいまだに引きずっているのか。よくわからんが、これも加齢ゆえということなのだろう。
終日デスクに貼り付いて仕事。電話もほぼ鳴らずメールも必要最低限の連絡が数通来ただけで、焦りを感じさせるようなせっぱ詰まった状況にはまったくなる様子もなく、ただ淡々と、しかしどうすれば狙い通りに、いや狙い以上に書けるのか、と考えに考えながら、静かに、しかし脳内ではたくさんの言葉を叫ぶように散らかしながら、某企業のパンフレットのコピーを進めた。
古井由吉『楽天の日々』。震災後のエッセイは戦中戦後の記憶を当時と重ねるようにしてい描いているものが多い気がする。小説作品もその傾向は強かった。