「群像」2020年1月号掲載。例の短篇特集。この作家のことはまったく知らず読んだこともなかったのだが、現代詩の散文詩みたいな書き出しが気に入ってしまったので、先入観ゼロで読み進めている。難解だが妙に映像的な描写は、松浦寿輝あたりを彷彿とさせるのだが、描写はさらにきめ細やか。
内容は…どうやら主人公が過去に考えたこと、その正体は小説などの言語芸術のようなのだが、その世界に迷いこんだ、ということらしい。よくある設定かもしれないが、不条理さとリアリズムが不思議なバランスで同居した文体が特異すぎて、作品世界のよくある不思議さを凌駕してしまっている。おもしろい。