わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

吉祥寺美術館「千田康広 -イメージからの解放-」

 世界的に活動する現代美術作家のインスタレーション。光(と闇)、そして自然が本来持っている美を、「加工」によって最大限に引き出したり、違う魅力を生み出したりするのが巧み。展示されているのは交錯しながら上昇するする短い光の中に包まれる体験型作品がメインで、あとは小品が少しだけでしたが、光を素材にした過去の作品のダイジェスト映像(といっても30分)も、さまざまな光の形や色、変化を感じることができて、素晴らしかった。

 社会や政治を直接批判するための芸術、抗議するための芸術、訴えるための芸術、怒りをぶつけるための芸術、といったものに、ぼくは基本的に魅力を感じない。芸術とは、美を起点にし、美を目的にし、美に奉仕し、そして新たな美を生み出すためのものだ。そのプロセスや完成品の鑑賞を通じて、感動し、場合によってはその理由について考え、解釈する。そういうものだと思っている。今朝の朝日新聞の朝刊でも坂本龍一が「音楽の力」という言葉に対する抵抗感について訴えていたが、まったく同感。今回の千田さんの作品も、自然美を、あるいは宇宙全体を礼讃し、その本質的な美に向き合い、人間として何ができるかを考え抜いたすえにたどり着いた表現なのだと思う。美のための美は、強く、そして揺るがない。
 ちなみにワタクシ、最近は「より言語化しにくい作品」を積極的に見るようにしています。

 

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