「群像」2020年9月号掲載。特集「戦争への想像力」の小説。
読了。 国籍も、戦争中の体験も、そして現在の立場も、香港との関わり方も異なる三人の表層的な友情が、シェイクスピアの「マクベス」のセリフで、なぜか一変する。一瞬ではあるかもしれないが、深くなる。その深さ。「マクベス」だけの力ではない。戦争体験、日本人の元外交官・谷尾が中国人の黄から寝取ってしまったイギリス人女性の存在、ウイスキーの力、ペニンシュラという場所、香港という土地の磁場、そんなものが複雑に関わりあったゆえの深さなのだろう。
技巧的な話。小説とは省略である、と痛感する構成。語らないことの饒舌さ。