わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

小島信夫『月光|暮坂』

「返信」読了。主人公(=作者か? 私小説っぽさは薄いが、プライベートな内容ではある)が、かつて家族ぐるみで交流があり、その長女には恋心も抱いていたK家の長男が、H学院大学の法学部長に就任したとたんにスキャンダルで失脚、そのため長女の娘が作者に宛てて、どうか長男のことを小説に書くなどして、その身の潔白を伝えてほしい、あなたが潔白だとは思っていないなら、それを書いても構わない、といった主旨の手紙をよこす。その返信が、この作品という構図。寄り道がつづき、うねりるような不思議な文体で思い出や他の作家の作品に対する意見などを語りながら、最後はその手紙の全文を引用し、最後まで作者自身の、第学部長のスキャンダルに対する意見については述べぬままに作品は終わる。行間から信用を読み取るべきなのか、それともそれ以上の何かを作者が感じていることを見抜くべきなのか。どっちでもいいかな、いずれにせよ読み手の想像力が一方的に拡がる作品。悪く言えば、ぼくがよく永井豪などの作品を批評(豪ちゃん好きなんだけどね)する際に使う言葉「さあ行くぞ!」で終わってるんだけどね。