わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

海原雄山/村越弘明

 四時。妙な圧迫感に目を覚ますと、花子がラックの上からぼくをじっと見下ろしている。ゴハンがほしいらしい。それじゃ、と昨晩Kaoriさんにいただいたウォルサムの療養食猫缶をあげてみたら、まったく食べようとしない。入院すると病院のメシの味気なさに辟易してしまうことがあるが、猫の世界もあれとおなじなのだろう。花子、先週は体調を壊していたとは言え、今はすっかり恢復しているのだから、味も素っ気もない病院メシのような猫缶を出されてもおもしろくはないだろう。食いしん坊だが味にもうるさくすぐに文句をつける海原雄山のような猫だ。食べなくて当然。
 六時四十分起床。淡い青を薄く平たく伸ばした空に、輝く鱗雲が広がっている。鱗の一枚一枚の形は魚のそれほど整っておらず、厚さも色も変化に富んでいる。暮れかけた冬の夕方を思わせるような陽の光に照らされ黄金色に光る様子をじっと見ていると、季節はたしかに秋なのだが、それ以外の時間の感覚がすべて消し飛んでしまったように思える。朝焼けの日は、天気が崩れるという。たしかに、今日の午後の予報は雨だ。深呼吸する。朝の空気に雨の気配はまだ微塵もない。
 某IT企業PR誌、某金属メーカー会社案内、某バイオ企業製品パンフなど。電話もメールも少ない一日。書斎に籠って黙々と作業をつづけていると、自分と世の中とが断絶したような気分になる。もちろんそんなことはない。取り掛かる仕事はたしかに外部からの依頼なのだから。孤独に慣れることは必要だが、孤独を愛しすぎてはいけない。戒めながら作業をつづける。
 夕方は気晴らしに整骨院へ。担当のおにーちゃん、井の頭公園にドブロを弾くカッチョいいブルースマンがいるんですよ、なんて話しかけてきた。井の頭公園は、フォークギターかき鳴らしてコブクロみたいな歌を歌うひとばかりだと思っていたが、しぶいオッサンも少なくないらしい。そのおにーちゃん、西国分寺で元ストリート・スライダーズのハリーこと村越弘明に会ったもと言っていた。顔はあいかわらずの夏みかん系でした、だって。