わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

熊野純彦「美と倫理のはざまで カントの世界像をめぐって(5)」

 カントの考える、自然が内包する美と崇高さについて。すべてはこの部分に集約されている。ちょっと長いけれど引用。

 

 自然は測りがたく、その広がりと威力とを直感的に評価するさいに、人間の能力は不十分である。にもかかわらず私たちの理性のうちにふくまれる「非-感性的尺度」は無限性そのものをうちにふくみ、「この尺度にくらべるならば、自然のすべては小なるもの」なのだ。倫理を可能とする自由と「私たちの内なる人間性」は自然のいっさいを調節している。あらゆる自然的な現象がしめす巨大さと威力を超え、自然性を端的に越えでている。一件かぎりなくひろがり、比較を絶した力をふるかに見える自然は、たしかに「構想力」を昂揚させる。それはしかし、自然がそこで「呈示」するものが人間の「使命の固有な崇高さ」であって、その崇高な使命は「自然を超えてüber die Nature」感得されるからなのである。

 

 ここで言う「私たちの内なる人間性」とは、たとえば(数学の)無限という存在をあたかも有限の概念として理解・把握できるという人間固有の能力。この点に、自然が畏れ敬うべき存在から支配し開拓し改造する対象へと変化していった(あるいは、少なくとも西洋においては、原始の時代から支配対象と捉え積極的に干渉しつづけた)原因や理由があるのかもしれない。

 

群像 2016年 03 月号 [雑誌]

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