わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『詩の小路』

 「20 ドゥイノ・エレギー訳文5」。曲芸師。「21 ドゥイノ・エレギー訳文6」。無花果の実。暗喩をどう解釈するか。表面的にイメージを捉えるのではなく、そこに秘められた作者の意図を読み取る。記号としての言葉の織りなすイメージではなく、作者が表現したいと思ったものの実体を、作者という人物像をフィルターにして、あるいは手がかりにして、おぼろげでもいい、掴んでみる。難解な詩を読むには、そんな心構えが必要か。作者は詩を読むことについて、こんなことを書いている。引用。

 すぐれた詩には、ことさら巧んだわけでもなかろうが、読者を気持よく、誤読の早瀬へ誘いこむところがある。読者のほうとしても、これに用心して身構えるようでは、詩の趣に添えない。誘いには乗るものだ。ただし、誤読の瀬から、動作魯鈍ながら、ぎりぎりの間合いで、手近の見映えのしない岸へ、とにかく飛び移らなくてはならない。
 読むのも曲芸のうちらしい。