わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『栖』

 1979年発売の短篇集。古書店で買った。平凡社発行で、初出は『文体』という雑誌の連載とある。文芸誌だろうが、うーん、知らない……。
 巻頭の表題作から。男性との関係を兄姉にとがめられ、そして田畑をうろうとする兄姉をとがめ、祖母の死を気に実家のある村を飛び出し、東京に再上京した主人公、佐枝の、あぶなっかしい、微妙な狂いを含んだ独身生活が淡々と描かれている。だが佐枝は偶然、家を出る原因となった男の住所と電話番号を電話帳から知ることになり……。
 現在の古井さんのような濃度の高い文体ではなく、極めて平易で読みやすい感覚なのだが、書かれていることは淡々としてはいるものの、読みすすめるうちに、息の詰まるような閉塞感と孤独のなかに、こちらもどっぷりと浸ってしまった。視界が狭くなる文体だと思った。

栖 (1979年)

栖 (1979年)

聖;栖 (新潮文庫)

聖;栖 (新潮文庫)

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