保坂和志「鉄の胡蝶は夢に記憶に歳月に掘るか(23)」。今回は新型コロナにまつわるエピソード、かと思いきや、最後のあたりでいきなり、まったく別の物語がはじまった。これ、次回につづくのだろうか。
小田原のどか「彫刻の問題 加藤典洋、吉本隆明、高村光太郎から回路をひらく」。著者は彫刻家で、評論も手掛けている方。これを読むまで存じ上げなかった。吉本や高村の転向については認識していたし、加藤典洋は尊敬する評論家だったということもあって読んでみたのだが……絵画のように、彫刻もまた都合のいいように政治利用されているという現状については、恥ずかしながら認識していなかった。長崎の平和記念公園の巨大な男性の彫刻はどちらかというと平和祈願というより権威主義っぽい感じだなー、とは思っていたのだけれど、そうなってしまう背景があるということ。現代において、芸術は「祈り」という役割も担っていると思うのだが、残念ながら純然たる祈りをピュアに感じることのできる作品は、とても少ないのかもしれない。
樫村晴香「自分が死ぬとはどういうことか?——の変遷」。いやー、難解。パートごとには理解できるのだけれど、その理解と理解がつながりあって全体として像を結ぶような感覚が、まったく得られない。ううう。もう一度通読すれば、多少は理解できるかな。