「群像」2020年11月号掲載。
詩人・石原吉郎の昭和21年の中央アジア強制収容所での、わずかな食事を二人で分け合った際の、緊張感が最高に高まった状態で平等な分配を実現したという経験の描写から、所有という概念が、上位審がない場合は共生と敵対・憎悪が共存したまま、互いの関係を維持し合うという微妙なバランスから成り立つことを解説し、そこから「所有」を認めるということについて考察している。所有権と「わたし」という概念は切っても切れないはずなのだが、実はこの「わたし」とは、わたしだけの概念ではないという考え方から、所有と契約の本質について導きだそうとしている。石原の経験など非常に興味深いのだけれど、今回は特に難解だったなあ。