「群像」2020年9月号掲載。
所有という概念は、自/他の単純な二項対立上の利害関係から生まれるわけではない。著者はソースティン・ヴェブレンの『有閑階級の理論』という著書の一文を引用しているが、これがぼくにはわかりやすかった。
「所有権は、生存に必要な最低限と言ったものとは関係のない根拠にもとづいて開始され、人間の制度として成長した」
この自/他の概念がヒュームの『人間本性論』第二巻「情念について」における分析の中心にあったという。これにつづく著者の「〈自〉が立つとおなじ強度で〈他〉が立ってくるような拮抗の関係、相互に煽りあうような二項の関係」という説明、さらにすんなりと腑に落ちた。