「群像」2020年9月号掲載。
西洋文化の精神構造としてのエディプス・コンプレックスはフロイトの精神分析における根幹をなしている…と思いきや、晩年のフロイトは『モーセという男と一神教』という著作で、モーゼには出エジプトを指導したモーゼとは別にもう一人、その後の一神教の指導者となった別のモーゼがいる…とういぶっとんだ説(というよりもはや空想)を展開している。この作品は、フロイトが第一次大戦後から最晩年までのどこかのタイミングでエディプス・コンプレックスの理論に疑問を感じたから生まれたのではないか、と著者は推測する。だとすると、第二次世界大戦を前に西洋の精神構造は一度崩壊し、再構築されることになるな…。つづきは次回。でも十月号はお休み。