わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

堀江敏幸「二月のつぎに七月が(43)」

「群像」2022年9月号掲載。この作品も40回を超えたか…。

 あけぼの市場の駐車場奥の土地絡みのもめ事。やっかいな状況を引き起こしている西戸という男の設定が絶妙。いわゆる反社の人なのだけれど、高校時代は野球部で名二塁手、そして彼が白線引きで引いたラインは人間業とは思えないほどまっすぐで、あまりに美しすぎるから打球がラインを避けてしまい、必ずフェアかファールか、はっきりわかるようになるという。小さな伝説のエピソードが、西戸の存在を近づけたり、遠ざけたり、妙な距離感を生み出している。