「群像」4月号掲載。読んだことのない作家。どんな作品を書いているのか、とWikipediaで調べたら、「日本人のレーシングドライバー」とある。同一人物ではないと思うが。この作品の著者かな。
- 作者: 飯田章
- 出版社/メーカー: 草場書房
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
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汎が二羽の雛を拾い上げると、一羽は火照ったようなからだで震えているけれど、もう一羽はピクとも動かない。小粒の目を閉じて、物体の素っ気なさで、横たわっている。握ると、まだかすかなぬくもりが感じられる。「一羽は死んでますね」汎が片手にのせた雛を見せると、「あら、死んでるの」と江梨子さんが声をあげて、「打ちどころがわるかったのかもしれない」汎は言って、どうしますかと訊くと、「……わたしにください」と絢子さんが左手を差し出す。お弔いをして、庭に埋葬するのだという。(中略)汎は一瞬逡巡した。生きた雛は触れることもできないのに、死んだ雛なら平気なのか、と奇妙に思いながら、絢子さんの透けるようなピンク色の掌の上にこわばった雛をそっとのせた。絢子さんはその上に右手をかぶせて、さもいとおしそうに押し包んでいる。い見た者より、死んでるもののほうが心さわがずにすむのか……。
今月の「群像」、リービ英雄も新作を発表していたので読んでみたのだが、ダメでした。リービの文章って、呼吸のリズムが違うというか、なんというか、美しい文体だとは思うのだが、なじめない感覚が強くて、どうしても読みすすめられない。『星条旗の聞こえない部屋』も読んだのだが、この違和感が強すぎて結局途中で放り投げちゃったし。うーん、今回の作品はタイトルが秀逸だからゼッタイ読めると思ったんだけどなあ。