わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

伊藤比呂美『河原荒草』読了

 今回は、なんだかうまくまとめきれないのだけれど。もう一度通読すると、もう少しまともなレビューが書けるかもしれない。
 どこまで行っても救われない物語が、「帰化」という言葉でようやく光が見え始め、主人公と弟妹が帰国することで、希望が差し込む。この、開けた感覚の力強さ。これぞ詩の力、と実感。重たくて暗いストーリーだが、これが小説として書かれていたら、と思うとぞっとする。ただただ悲愴なだけになりそうで怖い。
 生きるとは、どんなことなのか。暮らすとは、どんなことなのか。家族とは、どんなつながりなのか。国とは、どんなものなのか。本作を読んでもその答えは明確にならないのだが、少なくとも、考えるきっかけにはなる。それが大切なのではないか。読んでいる間はずっと、ぬるま湯につかってないで、もっとしっかり生き、考え、動きなさい。そう叱咤されているような気分だった。
 それからもう一点。本作は比呂美ねーさんの植物に対する愛が溢れていると思う。植物はヘーキで死んじゃう。だが、再生する。だからだろうか、ボロボロになって枯れちまうことをも、ねーさんは慈しんで書いている(と思う)。

河原荒草

河原荒草