今回は、なんだかうまくまとめきれないのだけれど。もう一度通読すると、もう少しまともなレビューが書けるかもしれない。
どこまで行っても救われない物語が、「帰化」という言葉でようやく光が見え始め、主人公と弟妹が帰国することで、希望が差し込む。この、開けた感覚の力強さ。これぞ詩の力、と実感。重たくて暗いストーリーだが、これが小説として書かれていたら、と思うとぞっとする。ただただ悲愴なだけになりそうで怖い。
生きるとは、どんなことなのか。暮らすとは、どんなことなのか。家族とは、どんなつながりなのか。国とは、どんなものなのか。本作を読んでもその答えは明確にならないのだが、少なくとも、考えるきっかけにはなる。それが大切なのではないか。読んでいる間はずっと、ぬるま湯につかってないで、もっとしっかり生き、考え、動きなさい。そう叱咤されているような気分だった。
それからもう一点。本作は比呂美ねーさんの植物に対する愛が溢れていると思う。植物はヘーキで死んじゃう。だが、再生する。だからだろうか、ボロボロになって枯れちまうことをも、ねーさんは慈しんで書いている(と思う)。
- 作者: 伊藤比呂美
- 出版社/メーカー: 思潮社
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (20件) を見る