わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

小川洋子『寡黙な死骸 みだらな弔い』

 初期なのかな? の「死」をテーマにした短篇集。横浜の行き帰りで読んだ。
 死という、陳腐ではあるが、おそらくはどんなに掘り下げても掘り下げきれないテーマを、小川洋子らしい、淡々とした悲しみに包まれた文体で、偏執的な出来事として「死」を描いている。死にこだわると言うよりは、死に方にこだわるとか、死ぬ前の記憶にこだわるとか。そのこだわりが、悲しみに包まれる。冷静で冷酷、しかし、だからこそ血が通っているように思える、逆説的な悲しみの描写。巻頭に収められた「洋菓子屋の午後」は傑作だと思う。

寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫)

寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫)