一昨日くらいから読みはじめている。
「日記」。主人公とちょっとだけ交際していたが今は亡くなってしまったらしい女性の弟から、主人公は、同じ時期にどんなことがあったかを比較しやすくするための仕様だろうか、一つの見開きに、同じ日付で10年分を書き込めるという変わった日記を手渡される。そこに登場しているのは、確かにそれを体験した過去の主人公自身、そして、まったくそんなことはしていない、その時点では彼女と別れてしまったはずなのに、なぜか彼女と旅行に行ったり…と交際をつづけていることになっているらしい主人公。彼は日記を読み進めるとともに、少しずつ虚構と現実の境界線を見しなっていく。うん、純粋におもしろいです。
「曖昧な出発」。主人公は、かつて交際していたものの、ある日一緒に旅行に行く約束を気まぐれ的に反故にしてしまい、その後は二度と会うことのなかった女性が、瀕死の状態なので見舞いに来てほしいという要請を彼女の夫らしき人物から受けるのだが…。文体が、傑作『柔らかい土をふんで、』を彷彿とさせる。長く、複雑で、ミクロ的で、そして豊饒な情景描写がとにかくすさまじい。

砂の粒/孤独な場所で 金井美恵子自選短篇集 (講談社文芸文庫)
- 作者: 金井美恵子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/11
- メディア: 文庫
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