「群像」2020年3月号掲載。語り手が以前ムーミンのミイのラグを買った店の店主の、従兄妹同士のほのかな感情、映画館で語り手が見かけた「ニューシネマ・パラダイス」を見る華奢な女の子とゴツい男の子のカップル、そしてルネだかルノワールだかの展覧会のポスターを見て「わたし、これ模写したことあるよ」「ボシャ?」と会話する元美術部の女性とガタイのいい男性。不思議な取り合わせだからこそ感じられる幸福感。保坂和志の作品は過去にいろいろ読んできたけれど、この部分は、『季節の記憶』でクイちゃんが本を一生懸命音読するシーンの次に好きだ。