結局、昨夜は頭痛がひどく本など読める状況ではなかった。よくもまあ、あんなに長い日記文が書けたものだとわれながら感心しながらも、やはり読むことと書くことでは、使う集中力にどこか違いでもあるのか、などとも考えてしまう。書くときは、湧き出す何かを言葉にして表わせばよい。その変換作業でつまることはあるが、概ね書きたいことは自覚しているにせよしていないにせよ、何らかの形で自分の中にあるのだ。それに、より明確な輪郭をもたせる。エッジを際立たせてやる。あるいは、ぼやけたままに書き写してみる。だから言葉は、あるときは藤田嗣治の面相筆で緻密に描いた稜線のある油絵のようになったり、ルノワールの柔らかな光に包まれた印象派の作品のようにもなったりする。この日記は、油絵というよりデッサンに近いのだろう。本来、ひとさまに見せるべきものではない。
六時四十分起床。目覚めても頭は痛みつづけている。風邪のウィルスのしぶとさに辟易しながら花子の世話、身支度、ぷちぷち体重測定。34g。今日も安定。そしてハイテンション。
午前中、一瞬だけ夏を思わせる強い陽射しがリビングに切り込んできたが、すぐに厚くて曖昧な形の雲に覆われ、空はたちまち灰色になった。仕事を進める。某不動産会社の会社案内など。風邪薬を飲んでいるせいか、妙に眠い。まぶたが重い。腕や首から何度も力が抜けそうになった。眠いのは、BGMにしていたBill Evansのせいかもしれない。
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十六時、霞ヶ関へ。一時間ほどかけて打ち合わせを済ませると、もう陽は沈んでいるのか、沈みかけているのか、空は墨っぽさを増している。地下鉄に乗り、荻窪駅で降りるとすっかり陽は暮れ、墨っぽいというよりも墨そのものの色に染まった。陽が沈んだ直後に家に帰ろうとすると、子どものころ遊んでいて気づけば友だちはみな帰ってしまい、自分ひとりだけ残されていたときのような気分にふと襲われるのはなぜだろう。
夜も仕事。またもKeith Jarrettのヘヴィ・ローテーション。Keithのピアノ・ソロやトリオものは、頭痛にやさしい。とはいえ決して体調はよくないので、二十二時で切り上げることにした。
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