「群像」2020年3月号からの新連載。文芸誌から「文×論」の方向に大きくリニューアルしたこの雑誌の、ひとつの決意表明のような立場にある連載だと思う。
シェアリングという新しい概念が登場して資本主義の形が少しずつ変わろうとしている一方で、貧富の差は拡大しつづけている。そんな時代背景の中でのこの連載だが、そういった形而下的なことではなく、英語・フランス語・ドイツ語・ラテン語などにおける「be」の意味、漢語の「有」という字が「ある」と「もつ」の二つの意味を持つこと、そして「存」と「在」という言葉の性質などをヒントに、存在論の延長として(対峙するものとしてではなく)、所有について考察を展開している…という理解でいいのだろうか。尊敬する哲学者のひとりである鷲田さんの新連載、理解しにくいところも多そうではあるが、しっかり読んで楽しみたい。