「群像」2021年3月号掲載。それにしても、最近の「群像」は読みたい作品が多過ぎて困る。「群像」以外の本を読めない。
で、本作。文学、映画、音楽と複数の分野で批評活動を展開する佐々木敦の小説論で、「群像」での連載をまとめた『それを小説と呼ぶ』刊行記念の対談。安藤礼二が佐々木が『それを小説と呼ぶ』の連載(連載中のタイトルは「全体論と有限——ひとつの「小説」論」。ぼくは連載で全部読んだが、単行本は内容が違うかもしれない)と並行して書いたという小説「半睡」を、安藤礼二がボロクソに(しかししっかり作品を読み、佐々木にとって理想的な受けとめ方をした上で)批評したのがきっかけで実現したZoom対談だそうだ。なんか、すごい。
安藤は「死者」という切り口から過去の作品を論じることで批評の世界に新たな可能性を切り拓くことに成功しているが、一方の佐々木は、何か超越的な存在を書こうとするチャレンジングな小説家たちの作品を論じており、ベクトルは違うが、おそらくその先に見ているものはほとんど同じなのだと思う。安藤は現在、「群像」で「空海」という評論を連載中。今日発売の4月号にも掲載されている。こちらも楽しみ。