五時四十分起床。昨日からの、ワクチンの副作用らしき微熱はまだつづいている。軽い頭痛、軽い胃の痛み、便通もおかしい。少し倦怠感もある。だが、病気の時とは明らかに違う。終日家にこもり、のんびり過ごした。
川崎徹「光の帝国」(「群像」2021年9月号掲載)。小特集「戦争の」に掲載された小説。著者はぼくら五十代以上には「キンチョール」のCMなどで馴染みの深いCMディレクターだが、ここ十年くらいはコンスタント(でもないかな)に小説を発表しつづけていて、実はその愛読者だったりする。
主人公であり語り手は、おそらく今の川崎本人がモデル。電通の映像関連の子会社の社員だった主人公は新人時代、その会社の常務の岩田さんが、実は宮城事件の生き残りである井田中佐であることを知る。その後、同期の仲間であるハシモトと岩田さん/井田中佐についてあれこれ調べては、彼がどんな思いで戦後を生き、広告などという彼の軍人時代の信念や思想からは正反対にも思える分野でサラリーマンをしていたのかに思いを馳せ、語りあう。二人とももはやあと何年生きられるかという年齢。その、「老いていく」という状況が、年齢によって変わるもの、変わらないものを痛烈に感じさせ、それが岩田/井田中佐の生き方といびつに対比されていく。そのアンバランスさがおそらく本作の魅力。川崎さんの小説のなかでは、個人的には母親について書かれた『最後に誉めるもの』がとてもよかったのだけれど、こちらのほうが読者を惹きつける。最高傑作かもしれない。