この本、挑発的なタイトルで業界ではかなり話題になっている。田端氏は、リクルートで「R25」を立ち上げ、LINEの仕掛け人としても有名な方。知らなかったけど。
第1章では、より多くのターゲットにアピールしたいのなら、マス広告による絨毯爆撃的な出稿は無意味、もっと精度のよいメディアプランニングをしなければ…という話は、広告業界では当たり前かもしれない。だがこの言葉にはグサリと来た。
テクノロジーがメディア環境の前提条件を大きく変え、一般ユーザーにメディア食う感情の「編集権」「編成権」を移行させてしまった。
テレビ番組のプログラムのように、視聴者がメディアに合わせなければならない時代は終焉し、視聴者がメディアを選び、好きな時に視聴できるようになった、というだけの話なのだけれど、 「編集権」「編成権」という言葉は実にしっくりとくる。40代の人ならピンと来るだろうが、さまざまなお気に入りの楽曲をダビングした「マイ・ベスト・ソング」のカセットテープを編集するのと、番組をHDDレコーダーでダビングして好きな時に視聴したりするのは、実は本質的に大差がない、ということなのだ。うんうん。
著者は、そんな状況なのだから視聴者をコントロールしようとなんて思ったらだめだ、適切なメディアプランニング、あるいはメディアに依存しないまったく別の方法で、心を動かせるようにしないと、と説く。ここまでは、現代のマーケティング事情が非常にコンパクトにまとめられている。
第2章からは、ひたすら事例と、著者二人の対談というカタチでの解説がラストまでつづく。ここは正直言って、ナナメ読みして「こんな事例あるんだ」と感じるだけで十分かも。
広告やマーケティングの最前線でバリバリやっていらっしゃる方には、この本はあまり向いていないんじゃないかな。それよりも、この業界にかかわることになってまだ日の浅い方のほうが役立てられる内容だと思う。
広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。
- 作者: 本田哲也,田端信太郎
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2014/07/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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