「群像」11月号掲載。世界=経済として近代世界システム、すなわち資本主義の起源は十六世紀にあるという主張から今回ははじまる。
カール・シュミットの「人間は本質的に陸の動物であるが、純粋に大地的ではなく、海を志向する要素も合わせ持っている」と定義し、「陸のエレメント」と「海のエレメント」のダイナミックな綱引きによって世界史(西洋史。大航海時代と限定してもいいのかもしれないが)が成立していると説くのだが、大澤氏はこれを「根拠が薄い」と批判。「陸のエレメント=定住」「海のエレメント=移動・移住」と定義しなおす。ちょっと引用。
つまり、移動への衝動が、陸上の範囲を超えて強化されたとき、それが「海」へと向かう移動として現れる、と考えたのである。あるいいはときに、移動への欲動や憧憬が、「海」に託して表現されている、と解釈するのだ。このように捉え直すことで、シュミットの「海のエレメント」の根拠の薄さを補完することができる。
さらに、バスコ・ダ・ガマやコロンブスを危険な大航海へと駆り出したモチベーションは何だったのかを考察する。