三時、窓の向こう側から叫び声が聞こえた。高い声がけたたましく響く。犯罪のような切羽詰まった感覚はないが、どこか野性的で、吹っ切れたような、酒に酔っているような、妙な強さがある。何と言っているかは聞き取れない。あまりにうるさかったら何か対策を講じようと思いつつ耳を澄ましていると、その必要がないことにすぐ気づいた。声の主は、鳥だ。マンションの裏手を流れる善福寺川を住処にする水鳥同士でケンカでもしたのだろう。こんなことが年に一、二度ある。川のそばに住むとはこういうことだということを、イマサラながら思い出した。
五時四十分、きちんと起床。首が痛む。軽く寝違えたようだ。ここ数日の忙しさに体が少しずつ悲鳴を上げはじめているのか。壊れるのはもう少し待ってほしい、と我が体を他人から借りたもののようについ考えてしまう。その考え方こそ重症だ。
仕事。いただいた資料を読めば読むほどわからなくなる。その読解にほぼ一日を費やした。
夕方、妻とウォーキングへ。桜は盛りを過ぎ、萼だけを残して散り、青々とした若い葉を広げはじめている。だが枝垂れや八重はこれからだ。
夕食は、クイーンズ伊勢丹の鹿児島フェアで買ったさつま揚げをまりまりと食った。
読書は古井由吉のエッセイ集『楽天の日々』。『夜明けの家』『仮往生伝試文』『聖耳』などの自作を振り返っている。個人的には、『仮往生伝試文』は二十世紀日本文学の最高傑作のひとつだと思っている。