「群像」2020年5月号掲載。1号あたりの掲載量がとにかく多いので、なかなか読み終わらないのだが…
猫たちの、そして人間の死を数多く見届けてきた語り手は、死の向こう側の世界を否定する人たちに反論するかのように、自分は肯定も否定もしない、と主張する。その考え方は、たくさんの猫たちと、異なる種として交流しつづけてきたこの語り手(そして保坂さん自身)だからこそ語れるのだろう。ちょっと引用。
死の向こう側を否定する人たちにとって生きているものの風景がすべてだ。だから側という考えもない、私には生きているものの風景はすべてではない、他はどうなのかは置いておいてとにかく生きているものの風景はあくまでも部分で全体じゃない、私は生きている方の風景しか見えてないんだから生きているあいだはこの風景の中で生きている猫たちと全力でつきあう
死後は、考えない。だからこそ、この一瞬一瞬が、尊くなる。生きるとはそういうことなのだろうし、猫をはじめとするドウブツを飼うというのも、そういうことだ。