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わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・哲学・思想の読書日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

座談会「群像70年の短篇名作を読む」

そうか、短編小説で恋愛というのは成り立ちにくいのか…。一瞬を切り取るような形で描かれた恋愛よりも、物語としての恋愛のほうが読者は興味を示すだろうし、小説としての完成度も高くなるのかもしれない。 群像 2016年 10月号 [雑誌] 出版社/メーカー…

多和田葉子「マヤコフスキーリング」

「新潮」2016年10月号掲載。「通り」をテーマにした連作の完結編。 道の紹介なのかと思いきや、いつの間にか語り手の妄想世界なのか幻覚なのかパラレルワールドなのか、異世界に読者は引き込まれ、奇妙な説得力と不条理なできごとが複雑にからみあう作品世界…

古井由吉「その日暮らし」

連作完結。病に壊れた体をなんとか動かしながら、いつものように散歩し、仕事し、疲れや眠気とうまく付き合う。それがタイトルの「その日暮らし」。ここ数年、いくつもの連作を重ねながら作者は「老い」を書きつづけている。歳をとるという事実をを受け入れ…

古井由吉「その日暮らし」

「新潮」2016年10月号掲載。 病気、入院。体の不調との付き合い方、という視点から老齢の作家は半生を振り返る。近年の古井さんの作品の肩の力の抜け具合は、病気が原因だったのかもしれない。知らんけど。 新潮 2016年 10 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 新…

筒井康隆+佐々木敦「なぜ「最後の長篇」なのか?」

「新潮」2016年9月号掲載。「新潮」の創刊120周年記念イベント?で、この二人の対談が行われた模様。そのときの文字起こし原稿。筒井の最高傑作という声もちらほら、の『モナドの領域』の創作秘話、みたいな話。 GODのモデルがグラウチョ=マルクスというの…

円城塔「闘字」

「新潮」2016年9月号掲載。 森羅万象を指し示す漢字を、世界の仕組みとして編集した大昔の漢字辞典の話から、いよいよ闘字の実戦へ…。 新潮 2016年 09 月号 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/08/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (3件) を見る …

円城塔「闘字」

「新潮」2016年9月号掲載。 調査のために中国(?)を訪問する語り手は、市場でカゴを編む老婆に呼び止められ、持っているんだろ、あんたのは猿か、と言われ、戸惑うが…。 眠くなっちゃったので、あまり読めていません。 新潮 2016年 09 月号 出版社/メーカ…

金井美恵子「雷鳴の湾--Miscellany」

「新潮」2016年9月号掲載。 Miscellanyとは寄せ集めの意味。過去の作品やらロラン・バルトやらを引用しながら、戦後間もない頃を生きた少女の服飾やレジャーなどに関する記憶を辿る。『噂の娘』あたりに通じる感じ。例によって一つの文がひたすら長くて複雑…

舞城王太郎「Would You Please Just Stop Making Sense?」

「新潮」2016年9月号掲載。このタイトルって、やっぱりトーキング・ヘッズなのかな? そして、舞城王太郎を読むのは何年ぶりだろう。 カリフォルニア市警で殺人課の刑事をしている日系人のタナカ、通称スポンジ。彼が担当することになった壮絶な殺人事件、そ…

瀬戸内寂聴「いのち」(6)

「群像」2016年9月号掲載。 親友(と言っていいのか)河野多恵子、そして内縁の夫との複雑な関係…。 群像 2016年 09 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/08/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (1件) を見る 死に支度 作者: 瀬戸内寂聴 …

佐伯一麦「山海記」(5)

「群像」2016年9月号掲載。 豪雪のなか、すぐ横が崖になる道を進むバスのなかで、主人公は偶然電車で乗り合わせた盲人の青年との記憶を辿る。 淡々とした(作中の、でもおそらく現実も同一の)事実の積み重ね。 群像 2016年 09 月号 [雑誌] 出版社/メーカー:…

橋本治「九十八歳になった私」(3)

「群像」2016年9月号掲載。老人力がスパークしてます。笑える。 群像 2016年 09 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/08/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (1件) を見る 橋本治の作品はこちら。

中上健次『熱風』読了

筆がのりはじめてるんじゃないかな、と感じたところで中上逝去で断筆。残念。未完作品であることがちょっと惜しい。毒味男が今後どんな悪事を働くのか。そこにオリエントの康の息子タケオがどのように関わるのか。幻覚的に、あるいは霊的に登場したオリュウ…

中上健次『熱風』

夏芙蓉の花の香り、金色の小鳥、と神話世界としての路地の象徴のように描かれていたものが再登場する。徐々に緻密でエネルギッシュな中上らしい描写もふえてきた。だが、もうすぐ終わる。というか、中断し断筆となってしまったところに近づいている。 千年の…

中上健次『熱風』

「岬」「枯木灘」「地の果て、至上の時」の主人公・秋幸の父であり「蠅の王」と呼ばれた悪徳材木商・浜村龍造をも取り込み、路地の住民たちをだますように土地の権利を奪っていった、いわば神話としての路地を崩壊させたのが、佐倉。路地がふたたび神話性を…

中上健次『熱風』

主人公が少しずつ、オリエントの康の息子であるタケオから、中本の一統の血と徳川の毒味役の血が半分ずつ流れる毒味男に移行している。書いているうちに、こちらのほうが魅力的に感じたのかも。 そして『岬』『枯木灘』などで物語の舞台となり、『千年の愉楽…

中上健次『熱風』

たかり。おどし。ゆすり。ころし。わー、こわいよー。 ここに来て、ちょっとだけだが心理描写が増えてきたような。不思議な小説だ。 P+D BOOKS 熱風 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2015/11/13 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを…

中上健次『熱風』

毒味男たちは、タケオの父であるオリエントの康が生まれた「路地」へ。一人の命が失われたタイミングで、タケオとカルロスは、実は自分たちは殺人ができなかったこと、殺すことが無意味であると思っていることを、毒味男に告白する…。 人の命があっけなく消…

中上健次『熱風』

突然の山火事。放火犯との偶然の合流。そしてGメンとその部下はタケオたちに殺され、地中に埋められ…。 こういう展開、やっぱり大衆文学作品として書かれているのだろうか。 P+D BOOKS 熱風 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2015/11/13 メデ…

中上健次『熱風』

新宿では釜割りのサブと呼ばれている、中本の血が流れる毒味男の本名が明かされる。かなりショッキングな由来。被差別部落という、この国のイヤな部分が具体的に浮かび上がってくる。 極限まで描写を削いだ疾走感のある文体。疾走感を通り越して、なにか焦っ…

中上健次『熱風』

麻薬Gメンと一緒にサウナに入る毒味男、タケオ、カルロス。Gメンは彼らを麻薬の売人の疑いがあるとしてマークしつづけている。何か行動を起こすたびに、タケオは裏社会の深みにはまっていく。 P+D BOOKS 熱風 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 小学館 発売日…

中上健次『熱風』

人殺しに墜ちるタケオ。ちょっとタイチに重なってくる…。 P+D BOOKS 熱風 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2015/11/13 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 中上健次全集〈13〉 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 集英社 発売日: …

中上健次『熱風』

目的の不明瞭な犯罪に荷担するタケオはカルロスに、周囲の日本人たちにはわからないように、スペイン語で革命の意志を伝える。 粗くぶっきらぼうな展開がラテンアメリカのエネルギーのようなものを感じさせる。 P+D BOOKS 熱風 作者: 中上健次 出版社/メーカ…

中上健次『熱風』

誘拐拉致事件が発生。この作品、ほかの作品よりエンタメ性が強いなあ。劇画や映画になりそうな。園子温監督に撮ってもらいたい。 P+D BOOKS 熱風 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2015/11/13 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る…

中上健次『熱風』

タケオを巻き込んだ犯罪計画のはじまり。 『千年の愉楽』のような美しい情景描写は皆無で、ひたすら中本の血を引く男タケオと彼を取り巻くアウトローな人物たちの愚直な行動ばかりが展開していく。 P+D BOOKS 熱風 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 小学館 …

中上健次『熱風』

主人公のタケオ、南米ではゲリラの訓練を受けていたことが判明。そしてエメラルドは、反政府組織の資金となる予定だった…。 南米がキナ臭かった時代。今だったら中東とアフリカ、ということになるのかな。でもこの二つの地域には日本人が大量に移民したりは…

中上健次『熱風』

タケオ、悪の道へ…。ストレートに物語が展開していく。 千年の愉楽 (河出文庫―BUNGEI Collection) 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 1992/10 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 51回 この商品を含むブログ (50件) を見る P+D BOOKS …

中上健次『熱風』

オカマとの会話、ノリも内容もグダグダ。これ、中上的なリアリズムなんだろうなあ。 千年の愉楽 (河出文庫―BUNGEI Collection) 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 1992/10 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 51回 この商品を含むブロ…

中上健次『熱風』

毒味男はタケオと自分が親類であることに気づき、歓喜する。そして「九階の怪人」はオリュウノオバ、タケオの言うママ・グランデ・オリュウの唯一の親類だった。路地が新宿の風俗街に復活したことになるのか? 運命に引き寄せられる、なんて表現するとご都合…

中上健次『熱風』

物語の動き方がダイナミック。路地の秋幸を主人公にした一連の作品は緻密に心理描写と情景描写をつみかさねていくことで衝撃的なラストに向かって作品のテンションを高めているが、物語としては大きな動きは起こらない。『千年の愉楽』は中本一族の高貴で汚…

中上健次『熱風』

過去の作品のなかで、性描写が一番カゲキかも。『千年の愉楽』だったかな、乳房が四つある女と交わるシーンがあったが、あんなもんじゃない。変態プレイ。 千年の愉楽 (河出文庫―BUNGEI Collection) 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 1…

中上健次『熱風』

やはりハメられそうになっていたタケオ。『千年の愉楽』などに登場する中本の血を継ぐ者たちは、みな色男(決してイケメンではない)だが、したたかさはずいぶん差があるような。 千年の愉楽 (河出文庫―BUNGEI Collection) 作者: 中上健次 出版社/メーカー: …

中上健次『熱風』

タケオはオカマにダマされるようにして、徳川家の血を引いているらしいマダムに事実上売り飛ばされてしまう。だが彼はエレベーターで偶然出会ったジゴロの青年に、もしジゴロになったら大人気になる、とその才能(っていうのか?)を見初められた。これも中…

中上健次『熱風』

中上が晩年に「週刊ポスト」に連載していた小説だが、残念ながら未完。でもペーパーバックで単行本されたので、読む。 路地に生きた中本の血を継ぐ男たちの壮大な物語の一篇。『千年の愉楽』に登場し、ブラジルに渡ったたオリエントの康の子孫(たぶん息子)…

イタロ・カルヴィーノ/米川良夫訳『見えない都市』

何日か前からちょいちょい読んでいる。学生のころに二回読んだはずなのだが、まったく内容を覚えていないくて呆然とする。ま、覚えていなくても仕方ない作品なんだけどね。マルコ・ポーロがフビライ汗に旅の途中で立ち寄ったさまざま都市について語る、とい…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画」(7)

「群像」2016年8月号掲載。 脱サラした小説家のモノローグだったはずが、女優の半生記になり、鳥獣戯画の話になり、そして等々、高山寺明恵上人の幼少期の話になってしまった。物語であることを拒否し、作品の構造を壊しながら新たに展開していく。 群像 201…

瀬戸内寂聴「いのち」(5)

「群像」2016年8月号掲載。 河野多惠子との思い出から、今度は大庭みな子へ。親友という感じが全面に出ていた河野との思い出とは対照的に、大庭に対しては尊敬と戸惑いとが複雑に入り混じっていて、不思議な感覚。 群像 2016年 08 月号 [雑誌] 出版社/メーカ…

佐伯一麦「山海記」(4)

「群像」2016年8月号掲載。 東北の震災後、被災地に住みつづける作家の「彼」は、水辺の災害の傷跡を歴史の中に残す土地をめぐる旅をつづける。地名の由来、古代の天皇と神の伝承。震災を背景としているところがズシンと重くのしかかるのだが、歴史を辿り断…

橋本治「九十八歳になった私」(2)

「群像」2016年8月号掲載。 ボケかけた老作家が、年一回のペースで衆議院解散してるじゃねーかとぼやく、というだけの話なのだが、記憶をうまく維持できず情報の理解力の衰えも感じはじめている自分へのユーモラスな自虐と社会批判の精神(といっても社会を…

木村友祐「野良ビトたちの燃え上がる肖像」

現在の社会状況や政治の方向性が巧みに盛り込まれている…。 新潮 2016年 08 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/07/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 木村友祐の作品はこちら。

古井由吉「孤帆一片」

語り手の記憶は戦後まもないころの中年男たちの会話の偽記憶へ。その曖昧さが身体の曖昧さへと流れ、入院中のまどろみとうめきの(偽ではない)記憶、そしてさらに曖昧な体験として斎場へ行く道を迷いに迷った(偽でははない)記憶へ…。 表題は李白の漢詩の…

古井由吉「孤帆一片」

「新潮」2016年8月号掲載。 魅力を欠いた咲き方、そして散り方をした桜。微かに夏の香りをただよわせながらも、衰えはじめた目には青葉の繁みのなかにその姿を見つけにくくなってしまったミズキの花。古井さん自身と思われる語り手の老作家は、季節に翻弄さ…

ダニロ・キシュ/山崎佳代子訳『庭、灰』

父の狂気が限界寸前。崩壊する親族との関係と家族の暮らし。家族それぞれもどんどん消耗していく。読んでいてツライ。 庭、灰/見えない都市 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2) 作者: イタロ・カルヴィーノ,ダニロ・キシュ,米川良夫,山崎佳代子 出版社/メー…

ダニロ・キシュ/山崎佳代子訳『庭、灰』

追いつめられる家族。追いつめられることを運命論で片付けようとする父。父を形式的に助ける親族たちの不潔さや肉感に感情をじわじわと揺さぶられる語り手。美化されていない、現実としての悲劇。冒頭の美しい旅の思い出との落差が激しくて、とにかく戸惑う…

ダニロ・キシュ/山崎佳代子訳『庭、灰』

冒頭の楽しそうな家族の旅の思い出から一転、自由主義的な奇書を執筆し発売しようとしたために思想犯のような状況となり役人から苦役を強いられ、家族は半流浪の生活を余儀なくされる…。過剰な描写は少しトーンダウン。 庭、灰/見えない都市 (池澤夏樹=個人…

ダニロ・キシュ/山崎佳代子訳『庭、灰』

「群像」の連載小説をみんな読んだので読書再開。 ほのかな憧れを抱くお姉さんの癲癇発作を目の当たりにした少年。母への愛情との奇妙だが誰でも通るのかもしれない、ジレンマ。ま、ぼくはこういう感情を抱いたことはないけど。 やっぱり過剰な描写の文体が…

瀬戸内寂聴「いのち」(4)

「群像」2016年7月号掲載。休載かと思ったら見間違えだった。 寂聴らしき語り手が、親友である河野多惠子の結婚生活と渡米、そして寂聴の出家後しばらくつづいた絶縁状態について語る。ここに円地文子がさりげなく絡んでいる。この作品、ちょっと「トットテ…

佐伯一麦「山海記」(3)

「群像」2016年7月号掲載。 ヨシ、アシ、オギといった水辺の植物のこと、日本の古代における天災の記録、そんなものをちょいちょい挟みながら、東日本大震災の被災地に住む小説家の乗ったバスは丹原、松原と進んでいく。 群像 2016年 07 月号 [雑誌] 出版社/…

ダニロ・キシュ/山崎佳代子訳『庭、灰』

鉄道での旅行の予告、そしてそれに関連する不眠症の改善方法についての模索。家族に悲劇が待っている、という先入観を抱いたまま読んでいるので、小さな幸せの描写がせつなくてせつなくて。 庭、灰/見えない都市 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2) 作者: イ…

ダニロ・キシュ/山崎佳代子訳『庭、灰』

語り手の「僕」の母への愛情と死への恐怖が、過剰気味に装飾された文体で語られる。文化的背景が違うのでわかりにくい比喩があったりして、ちょっと読みすすめるのがしんどくなるレベル。「僕」の繊細な感受性や真理の揺れみたいなものが巧みにつづられてい…