わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・哲学・思想の読書日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

読書日記

情報がなければ

五時三十分起床。曇天の夏日。時折青空がのぞくがおおむね曇り空。九州の大雨、非常に心が痛むが、東京にいるとニュースの映像を見ない限り、実感がわかない。日本はそれなりに広いのだ、と痛感。情報がなければ、喜びも悲しみも共有できない。 麦次郎、絶好…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

病気からの恢復が、なれ鮨の話などと複雑に絡み合いながら淡々と語られていく。徐々に、微かに、増していく生命力。無限の力というのではない。ただ、老作家ならではの、俗な悟り、というのはおかしな表現だが、そんな感覚から生まれる、決して弱くはない、…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

最終話「その日暮らし」。作者がモデルになっている老作家の、ここ数年の入院歴が淡々と語られる。妙に冷静で客観的な視点から語られる老いの様子が、静かなエネルギーとでも言おうか、ギリギリのところで確かな力を得ているような、そんな感覚が読み取れた…

佐々木敦「新・私小説論」(最終回)

「群像」2017年7 月号掲載。思った通り、最終回で取り上げられたのは保坂和志。『未明の闘争』の文法的に破綻した書き出し、そして名作『カンバセイション・ピース』の哲学的・認識論的・主体論的論考。『カンバセイション・ピース』は読み返そうかな。 群像…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画」(17)

「群像」2017年7月号掲載。 暗黒大陸じゃがたら。そして浪人生の夏、秋。じゃがたらはあんましなじみないんだよなあ。ゼルダは大好きだけど。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/06/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ…

橋本治「九十九歳になった私」(10)

「群像」2017年7月号掲載。 仮死状態になっていたカナブンに憧れを抱く語り手のじいさん(≒橋本治本人)と五十歳のゆとり世代のズレまくった会話、そしてさりげなく描かれるディストピア東京。こわ。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発…

佐伯一麦「山海記」(11)

「群像」2017年7月号掲載。大昔の洪水、比較的最近の洪水、親友の自殺、自分と親友の好きな音楽、そんな内容が、微かにオーバーラップしつつ、だが基本的には平行線という感じで進んでいく。 群像 2017年 07 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 20…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「孤帆一片」。入院中の明け方、眠れぬ語り手の男の頭の中に、突然李白の詩が記憶から浮かび上がってきた。李白、空襲の記憶、そして入院中の夜に聞こえてくる、老人たちのうめく声。ちょっとホラーです。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「孤帆一片」。ゆらぐように移ろう季節に、ゆらぎながら老体を任せるように、それでいて妙なほど客観的に季節を観察しながら過ごす語り手の日常。 そして終戦直後の、生き残るということ、家が焼かれなかったということ、という記憶。生き残ること罪なんてな…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(3)

「群像」2017年7月号掲載。 ある登場人物が珠算塾の手伝いをするエピソードは、よくわからないがぐいぐい引き込まれてしまった。ある種のノスタルジーなのだろうが、それだけでは済まされない文章の息遣い、地味でソフトな内容ゆえの、攻撃的な文章には出せ…

急ではなかったのかもしれない

六時起床。麦次郎、機嫌はよさそうだが、昨日がハイテンションすぎたのだろう、その反動らしく、今朝はいつもどおり、という感じ。きちんとオシッコもできていた。天気予報によると真夏日になるらしいので、温度管理をしっかりせねば。もっとも、朝の皮下輸…

週刊モーニング

「グラゼニ」元プロ野球選手と飲食店、かあ。これも銭絡みではあるな。 「GIANT KILLING」予想通りの展開。ぼくも現役時代は(サッカーじゃなくて陸上競技だけど)ケガは多かったからなあ。 「CITY」。大爆笑。今のモーニングでは一番好きな連載。 CITY…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

表題作読了。記憶のゆらぎ、感覚のゆらぎ、そして季節のゆらぎ。老いるとは、自身も、自身を取り巻く世界も、ゆらいでいるということをより深く認識できるようになる、ということなのかもしれない。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新潮社 発…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

表題作。老人の夢。見知らぬ女との、いわゆる「未遂」。恥じらいと、悔やみが、枯れた無意識の中に、しぶとくへばりつく…。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/02/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 古井由吉…

「週刊モーニング」

「疾風の勇人」最終回。政治的圧力による突然の打ち切りではないか、とネットでは話題になっているが、確かにそう受け取れそうな終わり方。昔の「ジャンプ」なんかで不人気が原因で打ち切りになると、最後にめちゃくちゃなスピードで物語を展開し、「俺たち…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「年寄りの行方」。数十年会わなかった、さほど親しくもない学生時代の友人との偶然の再会。そして彼から聞かされた、やはり数十年会うことのなかった彼の父との、親類と他人の境界線をゆらゆらとふらつくような、微妙な関係。そのあやしさに、それから十七…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「年寄りの行方」。年末の慌ただしさを老齢なりにうまくやりすごす語り手の日常の姿からゆるやかにはじまり、タイトル通りの、年末にふいに家を空ける年寄りたちの話しが小さく積み重なっていく。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新潮社 発売…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「時の刻み」読了。忙しいのでなかなか読み進まないのだが、そもそも古井作品は慌てて読むようなものでもない。 時の流れ方を、そして時とともに変化する自然の様子を、肉体やら五感やらを通り越して、思念で、あるいは魂で、ゆらゆらと感じている。年をとる…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「時の刻み」。カラダの外側から内側に向かって反響するよう時計の音、工場の音、電車の音といった、音の記憶たち。音が時代時代の記憶を伴う。音が、身体に、記憶を深く刻み込んでいく。 ゆらぐ玉の緒 作者: 古井由吉 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「時の刻み」。ここ数年、書き出しは季節の描写から、というのが定石なのだが、この短篇は十九世紀ドイツの詩人であるフリードリッヒ・ヘッベルの作品「秋の景色」の引用から始まる。和歌や俳句、連歌の引用は多かったが、海外作品というのはちょっと珍しい…

トリのゴハンの穀物の(と、「の」が重なると、万葉の歌のような雰囲気になる)

五時三十分。軽いのどの痛み。のど飴を舐めながら身支度すると気にならなくなった。食が若干細くなった麦次郎、体重は変動せず、元気もいい。コジコジは発情のピークをある程度過ぎたようで、ゲロの量がわずかに減りはじめている。カゴの中いっぱいに漂って…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「人違い」。知人とともにバーを訪れた二十歳の「私」は、バーのママに言われて、終戦の年の、東京での大規模な空襲の時におにぎりをめぐんでもらった女性がママだったことに気づき記憶が甦るのだが、しかし「私」が被害にあったのは荏原、ママは芝、と場所…

古井由吉『ゆらぐ玉の緒』

「群像」最新号、読みたいところは全部読んでしまったので、少し読んで中断していたこちらに戻った。といっても、連載中に読んでたから読むの二度目なんだが。 「道に鳴きつと」の後半。母の葬儀の思い出、地縁、死への想い……に、ベランダから聞いたかもしれ…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画」(16)

「群像」2017年6月号掲載。例によって迷走。というか、計算づくなのだろうが。高校時代に飼っていた雑種の白い犬の壮大な旅、そして死。色におぼれた浪人生活。 群像 2017年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/06 メディア: 雑誌 この…

橋本治「九十九歳になった私」(9)

「群像」2017年6月号掲載。生きることの退屈さ、面倒くささ。迷走し逸脱し散乱する意識。そのひからびっぷりがおもしろい。 群像 2017年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 橋本治の作…

多和田葉子「地球にちりばめられて」(7)

「群像」2017年6月号掲載。 若き言語学者とその母。子離れできない母と、母の扱いに困る息子。一種の共依存、なんだろうなあ。軽快で独特な語り口だが、描かれていることは重い。 群像 2017年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/06 メ…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」

「群像」2017年6月号掲載。 もちろん前回とおなじ世界観、おなじ登場人物、おなじ文体なのだけれど、一人ひとりの人生というか今に至る経緯、背景が少しずつ描かれ、ぼんやりしていた人格が徐々に色づきはじめた。 群像 2017年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカ…

三浦雅士「言語の政治学(11) 詐欺と宗教と貨幣」

「群像」2017年6月号掲載。5月7日が発売日なのだが、GWなので2日に届いてしまった。というわけで、ちょいちょい読み進めている。 司馬遼太郎の、興味は高く造詣も深いが決してそこにおぼれず一定の距離を保ち俯瞰して見つづけるという独自の宗教観のエピソー…

鷲田清一『素手のふるまい アートが探る〈未知の社会性〉』

「2 巻き込み 小森はるか/瀬尾夏美の模索」。 芸術家を名乗り切れず、美術マーケットで販売できる作品をつくらない「(自称)アーティスト」について言及している。著者は、これを出来事の作品化と理解し、さらにこのコト的・体験的作品の「液状化」を指摘…

磯崎憲一郎「鳥獣戯画(15)」

「群像」2017年5月号掲載。 高校時代の恋愛と友情の記憶。平和だなあ。 群像 2017年 05 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/04/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 磯崎憲一郎の作品はこちら。